HISTORICAL PERSON · 32年(推定)没

イエス・キリスト

キリスト教を創始した人物。「キリスト」は、ヘブライ語の「メシア」に当たる語で、もとは「油を注がれた者」の意味。「救世主イエス」に相当する呼び方。

生涯
32年(推定)没
死亡地
—
出生地
—
出典
世界地図
位置情報未登録

伝記

イエス・キリストは、キリスト教を創始した、または創始した人物であるという意を有する人物である。「イエス・キリスト」はフルネームではなく、ギリシア語で「キリストであるイエス」「イエスはキリストである」という内容を意味する。イエスは「神の救い」という意味をもつ名で、古代イスラエルのユダヤ人としては普通の名前であり、人としてはしばしばナザレのイエスと呼ばれる。ヘブライ語の語源は「ヤハウェは救い」を意味する男性名で、旧約聖書の民数記やヨシュア記に登場するイスラエルの指導者ヨシュアと同名である。キリストはヘブライ語のメシアのギリシア語訳クリストスに由来し、もとは「油を注がれた者」の意味である。古代イスラエルで王や祭司が任に就くときに油を塗る儀式があったことによるもので、転じて、神から使命を果たすために選ばれた者を指し、「救世主」にあたる。

キリスト教の多くの教派は、イエス・キリストを神の子であり、それが受肉して人となった、真の神であり真の人である救い主として信仰の対象とする。正統派の教義では、神性と人性を併せ持つ存在とされる。神の子は三位一体の子なる神で、ほかの2つの位格と本質を同じくし、「神のことば」(ロゴス)とも呼ばれる。人性は、罪を持たないという一点を除いてまったく完全であり、1つの位格のうちに神性と人性の2つの本性をもつと説かれる。三位一体を否定する教派は、これを一般に異端と見なす。

新約聖書の記述から、イエスは父なる神の子であると解釈される。たとえば、天使を遣わす特権と天国を父のものと言明したこと、罪を赦す権威を宣言したこと、終末に人を裁く権威を主張したこと、安息日は神と人のためにあると断言したことなどが挙げられる。使徒トマスは「私の主、私の神」と言い、イエスはこれを否定しなかった。イエスの言行を記した福音書を含む聖書は、世界でもっとも翻訳言語数が多い歴史的ベストセラーとされ、音楽・絵画・思想・哲学・世界史などに測り知れない影響を与えた。

誕生については、福音書によると、ヨセフの婚約者であったマリアが、結婚前に聖霊によって身ごもった。名前は、胎内にいるときに天使ガブリエルがナザレのヨセフまたはマリアに現れて告げたものと記される。旧約聖書の『イザヤ書』にはマリアの処女懐胎を想起させる記述があり、『マタイによる福音書』はこれを引用して、預言の成就であると解釈している。このため、「インマヌエル」という名がイエス・キリストの別名のように扱われることもある。『マタイ』と『マルコ』は冒頭で、それぞれ「ダビデの子イエス・キリスト」「神の子イエス・キリスト」と呼んでいる。

初期のキリスト教では、イエスを「イエス・キリスト」と呼ぶことが、イエスがキリストであると信じる信仰告白そのものであったと考えられる。パウロ書簡には「キリスト・イエス」の表現も見られるが、紀元1世紀から2世紀のあいだに「イエス・キリスト」の方が定着した。日本では、戦国時代から江戸時代初期のキリシタンはポルトガル語の発音から「ゼズス」と呼び、漢訳聖書では「耶蘇」の字が用いられた。近代以降は教派ごとに呼称が分かれ、プロテスタントは「イエス」、カトリックは伝統的に「イエズス」、日本ハリストス正教会は「イイスス」を用いた。1987年の『新共同訳』が「イエス」を採用してからは、カトリック教会でも「イエス」が公式とされるが、「イエズス」の呼称も根強く残っている。

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