伝記
バート・バカラックは、1928年5月12日にミズーリ州カンザスシティで生まれ、2023年2月8日に没したアメリカ合衆国の作曲家、編曲家、ピアニスト、音楽プロデューサーである。シンガーソングライターや楽団指揮者としても活動した。父は著名なコラムニストのマーク・バートラム・バカラックで、ドイツ系ユダヤ人の血をひく。母はピアニストだった。1932年にニューヨーク市クイーンズ区のキュー・ガーデンズに転居した。
フォレスト・ヒルズ高校を卒業したのち、カナダ・モントリオールのマギル大学、ニューヨークのマネス音楽大学で学び、夏にはバークシャー音楽センターにも通った。カリフォルニア州サンタバーバラのウェスト音楽アカデミーでは、ダリウス・ミヨーらに師事している。ミヨーやヘンリー・カウエルといったクラシックの作曲家から学術的な作曲技法を学び、そのアカデミックな音楽感覚がこの時期に培われたとされる。1950年から1952年までは徴兵されて陸軍に所属した。帰国後は多くの曲を書きためながらも不遇の時期が続いたが、マレーネ・ディートリヒがその才能を見抜き、自らの伴奏者に起用した。彼女の公私にわたるパートナーとなり、ステージに同行して、オーケストラの指揮、編曲、伴奏ピアノを担当するようになったころから注目を集めた。
やがて作詞家ハル・デヴィッドとのコンビで最盛期を迎え、1960年代から1970年代にかけて世界的なヒットを連発した。全米チャートでは73曲、全英チャートでは52曲がトップ40に入った。ディオンヌ・ワーウィック、B・J・トーマス、ダスティ・スプリングフィールド、カーペンターズ、トム・ジョーンズらに楽曲を提供し、編曲やプロデュースも手がけた。代表作には「ウォーク・オン・バイ」「遙かなる影」「世界は愛を求めている」「小さな願い」「恋よ、さようなら」などがある。「恋よ、さようなら」は、1968年のミュージカル『プロミセス・プロミセス』の劇中曲である。映画音楽では、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『明日に向って撃て!』の主題歌「雨にぬれても」がアカデミー主題歌賞を受け、ビルボードで1970年1月3日から4週連続で1位となり、同年の年間ランキングでも第1位となった。この映画の音楽はアカデミー作曲賞も受けている。1967年の『カジノロワイヤル』の音楽も担当した。曲はコード進行の激しい構造を特徴とし、ジャズを出発点にボサノヴァの流行の影響も取り入れ、モダンな和声と複雑なリズムで独自の作風を確立した。
1980年代に入るころには、ブラスやストリングスを含むフルオーケストラの編曲が求められなくなり、活躍の場は減った。それでも「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」(1981年)や「愛のハーモニー」(1985年)などを発表し、ビルボードで1位となる世界的なヒットを得た。1997年には映画『オースティン・パワーズ』にエルヴィス・コステロとともにカメオ出演した。2005年に28年ぶりのソロ・アルバムを出し、2020年にはアルバム『ブルー・アンブレラ』を発表した。
私生活では4回結婚し、2人目の妻は女優アンジー・ディキンソン、3人目の妻はシンガーソングライターのキャロル・ベイヤー・セイガーである。サラブレッドの馬主・生産者でもあった。グラミー賞では1997年に理事会賞、2008年に生涯業績賞を受けた。2023年2月8日、ロサンゼルスの自宅で自然死した。
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