伝記
キオスのメトロドロスは、紀元前4世紀ごろに活動したギリシアの哲学者である。デモクリトスの学派に属し、のちのエピクロスの重要な先駆者とされる。生没年ははっきりせず、紀元前449年から350年とする記述もある。ソクラテス以前の哲学者に数えられ、修辞家テオクリトスの子だったともいわれる。
師については、キオスのネッソスの弟子だったとも、デモクリトス自身に学んだともされる。プロタゴラスにも学んだとする説明もある。彼はスミュルナのディオゲネスを教え、そのディオゲネスがアナクサルコスを教えたと伝えられる。アナクサルコスはピュロンの友人でもあったことから、メトロドロスは原子論と後世の懐疑主義をつなぐ位置にある人物として関心を集めてきた。
その思想は徹底した懐疑論である。デモクリトスの原子と空虚、そして複数の世界が存在するという説を受け入れた。万物の始まりは分割できないものと空虚であり、そこから存在と非存在が生じると考えた。宇宙は無限なので世界も際限なく存在し、それらは必然によって生まれ、また滅びるとした。世界は時の始まりから存在するとも説く。一方、星は日ごとに、太陽の熱を受けた空気中の湿気から作られるという独自の説も唱えた。恒星や月は燃える太陽に照らされて輝き、天の川は太陽が通った跡が筋になったものだと述べたと伝わる。
認識については、感覚は人を欺くと見なし、あらゆるものは各人にとって、その人にそう見えるとおりのものでしかないと主張した。キケロによれば、自著『自然について』の冒頭で「われわれは何も知らない。知っているかどうかさえ知らない」と記したという。同じ言葉は、キケロの名を挙げないセクストス・エンペイリコスの著作にも見える。著作として知られるのは『自然論』である。
「広い畑にたった一本の麦の穂があるのは、無限の空間にたった一つの世界があるのと同じくらい奇妙だ」という言葉も彼のものとされる。これが本当に彼の言葉なら、古代世界としては進んだ宇宙観を示すものだと評される。エピクロスが多数の世界を語るにあたって、彼に着想を得たようだともいわれる。
同じ年に亡くなった人物
- レオカレス (紀元前 400年(推定))
- 大ケフィソドトス (紀元前 400年(推定))
- ロドスのティモクラテス (紀元前400)
- Androtion (紀元前400)
- ペウケスタス (紀元前 400年(推定))
同じ地域に関係する人物
- ヘルマルコス (紀元前249)
- エノピデス (紀元前419)
- ジョヴァンニ・ジュスティニアーニ (1453年没)
- カブリアス (紀元前357年没)
- ナムク・ケマル (1888年没)