伝記
ロジャー・ヴァーノン・スクルートン卿は、1944年2月27日に生まれ、2020年1月12日に没したイギリスの哲学者、美学者、作曲家、保守思想家である。ロンドン大学バークベック・カレッジの教授を務めた。美学ではモダニズム建築や近現代音楽を批判し、政治哲学ではきわめて英国的な独自の保守主義を展開して、社会主義や共産主義だけでなく新自由主義にも批判を向けた。
イングランドのリンカンシャーの出身である。1973年、学位論文「芸術と想像力――心の哲学の一論考」によってケンブリッジ大学ジーザス・カレッジで博士の学位を得た。指導教員はエリザベス・アンスコムだった。この論文は『芸術と想像力』と題して1974年に処女作として出版された。分析哲学者として訓練を受けたが、ほかの哲学の系譜にも惹かれたという。この本で、美的な関心を他と区別するのは、あるものをそれ自体のために鑑賞することを含む点だと論じた。1971年から1992年までバークベック・カレッジで美学を講じ、生涯を通じて美学を専門とした。その後も『建築の美学』(1979年)、『美的理解』(1983年)、『音楽の美学』(1997年)、『美』(2010年)などを著した。哲学者のポール・ガイヤーは、リチャード・ウォルハイム以降で最も重要なイギリスの美学者はスクルートンだと述べている。2008年にはダラム大学で、美学におけるスクルートンの影響を評価する2日間の会議が開かれ、2012年にはその美学を論じた論集『スクルートンの美学』が刊行された。
2009年3月の討論会では、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』とスーパーモデルのケイト・モスの写真を並べ、「英国は美に無関心になった」という動議を提出した。その後、BBCのドキュメンタリー番組『美はなぜ大切か』を執筆・発表し、芸術、建築、音楽で美が伝統的な地位を回復すべきだと主張した。本人によれば、番組には500通を超える電子メールが寄せられ、1通を除いて、誰かが言うべきことを言ってくれたという感謝の内容だった。2018年には、神への信仰がより美しい建築を生むと主張し、ヴェネツィアの例を挙げて、共同体に真の根を下ろすには奉献の行いから始めるべきだと述べた。立憲君主制を支持し、君主制を政治の上にあって、より穏やかで高貴な領域から人間の喧騒を照らす光だと表現した。1991年のロサンゼルス・タイムズ紙のコラムでは、王政が中欧の平和に貢献し、それを失ったことが70年に及ぶ大陸の対立を招いたと論じている。
一方で、日本たばこ産業(JT)との関係が問題になった。スクルートンは2002年までに、世界保健機関の反たばこキャンペーンを批判し、その予算をワクチン接種やエイズ対策に回すべきだなどと主張する文章を、有名な新聞や学会誌に寄せていた。ところが、JTから資金援助を受けていたことが、2002年初めにガーディアン紙で暴露された。同紙によれば、JT宛ての極秘のメールで、新聞・雑誌への寄稿の見返りとして受け取っていた月4500ポンドの謝礼を、1000ポンド増やすよう依頼していた。同じメールでは、世界保健機関の信頼を失わせる記事をメディアに載せることや、規制の緩い発展途上国の政府高官にJTの職員を接触させることなども助言していた。この告発を受けて、フィナンシャル・タイムズ紙は彼が毎週連載していたコラムの掲載を中止し、ウォールストリート・ジャーナル紙も契約を打ち切った。
小説も書き、著作は哲学、保守思想、音楽、建築、ワインなど多岐にわたる。2020年1月12日に亡くなった。
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